今回のコンサルタント
株式会社M&A介護ジャパン/株式会社ウィザーズプラス
M&Aコンサルタント 横濱 太郎
不動産開発会社を経てウィザーズグループに入社。株式会社の事業承継は勿論のこと、施設ごとに切り分けた事業承継や再生案件を手掛けた実績あり。
目次
きっかけは、弊社がお送りした一通の手紙からはじまりました。
売り主様が他業種から介護事業へ参入されたのは、2000年代のこと。
介護保険制度の開始を機に、『地域に貢献したい』という強い想いを抱いて、参入を決断。
以来、地域や利用者様、ご家族に長年愛される運営を続けられていましたが、コロナ禍以降、経営環境の変化に責任者の退職、さらには本業への投資集中といったタイミングが重なり、「介護事業の継続に対する不安は、日々募るばかりだった」と仰っていました。
そのようなときに、たまたまポストに入っていた『介護業界専門の事業承継支援』の手紙が目に留まります。
事業承継(M&A)には当初、懐疑的な印象をお持ちでしたが、「もしかしたら、探し求めていた解決策はこれなのかもしれない」と、考えた末にお問い合わせをいただいたのが、売り主様と弊社の出会いでした。
「続けるべきか、廃止すべきか。いくら悩んでも答えが見つからなくて……」
最初のお電話を受けたときに、ふと売り主様が口にされた言葉を、今でも鮮明に覚えています。
自ら心血を注いで育てた事業を他者に託すことに、ためらいや不安を感じるのは当然のことであり、それだけ真摯に介護事業に向き合ってこられた『証』にほかなりません。
最初の面談では、経営状況や設立の経緯とともに、現場で懸命に働く従業員への想いを詳しく伺いました。
「現場で頑張ってくれている従業員には本当に感謝しています。でも、経営者として、まだ十分に応えられていないんです」
かつては立地や集客力により安定した収益を上げていたものの、競合の増加や人材流出によって従業員の負担が増加。
売り主様はその現状に、強い責任感と負い目を感じていらっしゃいました。
だからこそ、売り主様が譲渡先の『絶対条件』に挙げられたのは、『従業員がやりがいを持ちながら働き続けられ、かつ事業を再成長させられる企業であること』でした。
「従業員の雇用を守れる相手でなければ、意味がないと思っています。限界はあるかもしれませんが、それでも……」
その強い覚悟に触れたとき、私は直感しました。
売り主様と同じ、いや、それ以上の覚悟を持ってこの案件に臨まなければならない。
この想いを未来へ繋いでいくのだと、その場で売り主様に誓ったことを覚えています。
実は売り主様は、弊社へご相談いただく前に、金融機関からも候補先の紹介を受けていらっしゃいました。
私もいくつか紹介先の概要を拝見しましたが、そこに並んでいたのは、介護事業が未経験の企業や、数字優先の投資色が強い企業ばかり。
決して悪い企業というわけではありませんが、理想とは遠い候補先に視線が向くたびに見せる、売り主様の複雑な表情。
それは、なぜ当初、売り主様が事業承継に懐疑的な姿勢を持たれていたのかを理解するのに、十分すぎる理由でした。
私はこの経緯を踏まえて、候補先を『介護事業の専門性』と『同一地域での運営実績』の観点で厳選し、2~3社まで絞り込みを行いました。
売り主様が最も好意的な反応を示されたのは、同一地域で複数の運営実績があり、従業員の引き継ぎを前提とする企業です。
私はすぐに、その買い主様となる候補企業へ打診を行いました。
先方の責任者様からは、事業の価値に加えて、従業員を大切にする売り主様の姿勢に深い共感をいただき、「この事業を想いごと引き継ぎたい」と仰っていただきました。
面談の調整にあたり、私は買い主様側に、同日の『施設見学』を提案します。
売り主様の理念や積み上げてきたものを実際に目で見て、肌で感じていただく。それが、言葉を尽くすよりも確かな『想いの証明』になると考えたからです。
当日、従業員の真摯な働きぶりや、利用者様の穏やかな表情を目の当たりにした責任者様は、この承継への意欲をいっそう強くされていました。
事業の魅力を余すことなくお伝えでき、双方にとって『最良のマッチング』になると確信した施設見学となりました。
施設見学の後、売り主様と買い主様の間で、譲渡に関する条件の調整やリスクの確認などの協議が進められていました。
順調に見えた協議でしたが、直近の売り上げと利益の低下という『経営指標の悪化』に焦点が当たったことで、事態は一変。
譲渡価格の根拠が揺らぎ、協議は一時、停滞を余儀なくされました。緊迫した空気の中、何度かの交渉を重ねた後、買い主様は売り主様にこう語ります。
「決算書の数字だけで、この事業の価値を測ることはしません。これまで紡がれてきた歴史と地域でのブランド、誠実な従業員、そしてまだ見ぬ可能性――。それこそが、私たちが引き継ぎたい本当の価値なのです」
その言葉は、売り主様がなぜ事業承継を決意したのか、その原点に立ち返るきっかけとなりました。
最終的に価格面での折り合いをつけたのはもちろんですが、売り主様が迷いを断ち切り、決断を下された理由。
それは、買い主様の掲げるビジョンと、自らの歩んできた道が確かに共鳴したからだと感じています。
譲渡後、売り主様が大切にされていた従業員への想いは、確実に現場へと届きました。
譲渡先となった企業のもとで、スタッフ一人ひとりがやりがいを持って働ける環境が整い、今、施設全体にはかつてのような活気が戻っています。
また、売り主様も長年取り組まれていた本業に集中できるようになり、新たな挑戦へ踏み出すための力強い一歩を記されています。
事業承継は、決して終わりではありません。
それは、双方が描く新たな未来への『第一歩』です。
その一歩を踏み出すために、長年にわたり事業の土台を築き、守り抜いてこられた売り主様。そして、その想いに確かな覚悟と共感をもって応えられた買い主様。
お二方の出会いと決断に、心からの敬意を込めて。
私は伴走者として、この尊い『軌跡』をここに記録いたします。
介護事業は、人々の暮らしと地域の温もりを支える、かけがえのない営みです。
その未来を絶やすことなく、次世代へと繋いでいきたい。
私は介護事業専門のコンサルタントとして、数字だけでは語れない『経営者の心の機微』を何よりも大切にしながら、日々の支援に向き合っています。
もし今、一人でお悩みを抱えていらっしゃるのであれば、どうかその重荷を少しだけ分かち合わせてください。解決への道筋を共に見つけ出すために、私は全力でサポートさせていただきます。
まずは、あなたの大切にされてきた事業への想いを、お聞かせいただけませんか。
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